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食品ロス ダイナミックプライシング

小売業・スーパーに関するダイナミックプライシング活用事例(食品ロス・フードロス対応)

Adachi Haruka


1.食品ロスの現状

ここ数年、食品ロスが話題に取り上げられています。食品ロスとは、売れ残りや食べ残しなど、本来食べられるのに捨てられてしまう食品のことを指します。

政府統計によると、1年で出荷された食料の量のうち約7%が食品ロス量にあたります。7%という数字だけみれば、全体に占める割合は僅かのように思います。

しかし、実際の食品ロス量は約600万トンと巨大な量です。

出荷された食料の量に占める食品ロス量の割合
図1:出荷された食料の量に占める食品ロス量の割合 \(^{ \ast 1}\)
\(^{ \ast 1}\)出典: 食べ物はどのくらい捨てられているの? 2014年度(一般社団法人 産業環境管理協会資源・リサイクル促進センター)
http://www.cjc.or.jp/school/d/d-2-4.html

この食品ロスの出所は、家庭(ユーザー)と食品関連事業者(ベンダー)が半々です。ユーザーとベンダーそれぞれの意識で、食品ロスは削減できます。

例えば、ユーザーの食品ロス要因として、野菜や肉など食材の過剰な除去、料理の作りすぎや食材の買いすぎ、食べ残しが挙げられます。

ベンダーの食品ロス要因として、容器に合わせた量を生産する過程での食材余り、食品の売れ残りや規格未達成が挙げられます。

これらはもったいない精神で消費すれば、ロス削減はもちろんコスト削減にも繋がります!

2.食品ロス削減の取り組み

食品ロスを防ぐ取り組み
図2:食品ロスを防ぐ取り組み

ユーザー側が実現できる取り組みのうち難易度の低いものは、料理の作りすぎや食材の買いすぎ、食べ残しを防ぐことでしょう。とはいえ、料理をしようと思うと自分でコントロールしにくいものです。

食品各社はユーザー向けに、料理に必要な分だけの食材キットを提供しています。自分でコントロールすることが難しければ、このようなキットを利用するのも手でしょう。特にオイシックス社は、食品ロス削減につながる食材キットを販売しています。 \(^{ \ast 2}\)

\(^{ \ast 2}\)家庭と畑のロスを削減できるミールキット新発売、食品ロス削減につながる商品の特集販売も実施(オイシックス・ラ・大地)

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000373.000008895.html

ベンダー側が実現できる取り組みのうち難易度の低いものは、食品の売れ残りを防ぐことや規格外品を何らかの形で売ることでしょう。

食品の売れ残りは、例えば、スーパーでは閉店の時間に近くなると食品を割引し売り切ろうとします。

また、ネット販売サイトでは規格外品を規格品よりも安値で販売することもあります。 日本人なら毎年2月に恵方巻を食べることが多いのではないでしょうか?

過去に、恵方巻の大量生産・大量廃棄が問題としてニュースで取り上げられていました。需要に対して供給過多になれば食品ロスが生じます。

このような恵方巻ロスを防ぐため、予約制を推奨するベンダーもあります。ただ予約制にするのではなく、ユーザーがメリットを感じるような特典、例えば予約すればポイント付与するといった施策を打ち出しているところもあります。

3.AI(人工知能)を活用した食品ロスの削減

以上のように、ユーザーとベンダーの心がけ次第で食品ロスを削減することはできます。さらに削減していくためには、定性的な心がけのほか、定量的な施策が必要になってきます。この定量的な施策はAI(人工知能)を活用して生み出せます。

例えば前項で挙げた、スーパーでは閉店の時間に近くなると食品を割引し売り切ることを再度考えてみましょう。食品に割引シールを貼る時間は、店によって決められている場合もあれば、担当者のさじ加減による場合もあります。

しかし、多くのスーパーでは夕方17時以降から割引し始めるのではないでしょうか。もしかすると、17時より前の時間から割引し始めるほうが良い可能性もあります。

特定の顧客に対し最適な時間に最適な価格で商品を売る、また最適な時期に最適な量の材料を仕入れるなどを仕組化できれば、食品ロス削減につながるのではないでしょうか。この仕組みのイメージ図は以下の通りです。


各種データと価格最適化エンジンの構成
図3:各種データと価格最適化エンジンの構成

まず、商品の最適価格を推定するためには、その商品の需要を予測することから始めるとよいでしょう。

人気のある売れ筋商品であれば(需要があれば)商品の価格を高くしても顧客は購入しますが、人気のない商品であれば(需要がなければ)商品の価格を安くしないと顧客は購入しません。


需要予測のイメージ
図4:需要予測のイメージ

予測に使うデータセット

予測に使うデータセット

需要予測のためには最低限、商品情報やPOSデータなどのベンダーが保有する内部データを利用します。これらのデータはシステム上で販売や在庫を管理していれば、データを取り出し利用することは容易でしょう。

しかしこれらのデータは、購入後の結果データであることに注意して下さい。つまり、顧客が何を買ったのか結果は分かっても、顧客がそれを買うまでに何と比較したかといった購入前の行動履歴は分かりません。

 顧客の購入前の行動履歴は、オンライン店舗であればウェブの操作履歴にあたります。実店舗であれば、カメラやセンサを設置してデータ化するしかありません。

顧客は店舗内のどの棚に滞留したか、どの商品を手に取ったか(手に取ったが購入しなかった)などの情報を取得します。

商品情報やPOSデータのみでも需要を予測できますが、さらに顧客の行動履歴データを利用すれば、予測精度は向上するでしょう。

また、予測精度をさらに高めるために、店舗周辺の天気やイベント情報、スマートフォンのアプリから取得できる位置情報データなどの外部データを利用する手もあります。

予測に使うアルゴリズム

利用可能なデータセットが揃ったら特徴量を抽出し、機械学習のアルゴリズムを使って予測します。

機械学習は大きく分けて、教師あり学習、教師なし学習、強化学習があります。特に、教師あり学習は分類と回帰問題を解くことができます。

需要予測には、教師あり学習(回帰)のアルゴリズムを利用します。 \(^{ \ast 3}\)


分類(左)と回帰(右)のイメージ
図5:分類(左)と回(右)のイメージ

ここでは、教師あり学習(回帰)のアルゴリズムのうち重回帰分析を使って説明します。回帰分析はExcelから手軽に使えるため、皆さんに馴染み深い手法ではないでしょうか。

次のような形式のデータセットがあるとします。結果には予測したい対象をセットします。そして、結果を説明するデータ(項目)は内部データや外部データから作成します。


データセット例
図6:データセット例

このデータセットから予測式(予測モデル)は次のように表現できます。下図の右に示した数式に実際の数値を代入すると、将来の売上数を計算できます。


予測モデル例
図7:予測モデル例 \(^{ \ast 4}\)

データセットによっては、回帰木やサポートベクタ回帰など重回帰以外のアルゴリズムを利用するよい場合もあります。

予測の質はデータセットの質に左右されます。本記事をご覧になり、自社で試してみたいと考えられたら、どのようなデータを蓄積し利用可能なのか整理されることをおススメします。

また、データは取得できておりPoC(実証実験)から始めたいと考えていても何から手を付けてよいか分からない場合は、弊社ダイナミックプライシングテクノロジーへご相談下さい。弊社はコンサルティングと受託開発の両面から、AIを活用した価格最適化をご支援します。


  • ダイナミックプライシングコンサルティングのご支援内容はこちら
  • ダイナミックプライシング受託開発のご支援内容はこちら

\(^{ \ast 1}\)http://www.cjc.or.jp/school/d/d-2-4.html
\(^{ \ast 2}\) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000373.000008895.html
\(^{ \ast 3}\) 教師あり学習(分類)のアルゴリズムを利用することもできます。この場合、予測データの形式は数値ではなくカテゴリ値になります。
\(^{ \ast 4}\) 係数はデータセットをもとに学習して決めます。

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